研究概要

佐藤グループ

我々のグループでは海洋生物を中心とする食品の健康増進機能について研究を行っている。産業上重要な海洋生物の食品加工過程で生じる副産物から生産されるペプチド、またクロレラ等の健康増進効果がエピソードとして知られているが、その活性成分・活性のメカニズムが不明であるものを研究対象としている。

 医薬品の開発は、High throughputのスクリーニングで候補物質を検索し、活性成分をリード化合物として分子をデザインし、動物実験、ヒト試験で安全性と効果を証明してゆくアプローチが一般的にとられる。一方、食品は分子の改変は基本的に困難である。また食品中の成分は消化・吸収・代謝で構造と機能が大きく変化する場合が多い。そのためbioavailabilityを十分考慮し、できるだけ早期にヒトまたは動物で効果を検証する必要がある。そこで、我々は2つのアプローチを用いている。1つはin vivo activity-guided fractionationの導入である。文字通り、動物実験で経口摂取により活性を評価し、活性成分を同定する手法である。2つめは食品を経口摂取した後にターゲットに到達した食品成分を同定し、その活性をin vitroで評価する手法である。つまり経口摂取で効果がある成分、または吸収され活性を持つ成分を同定するという考え方である。しかし、前者では動物実験で評価できる量のサンプルの分画が困難であり、後者では生体の複雑なマトリックスの中の食事由来成分を分離・同定することが困難であった。この問題を解決するため、ペプチドの両性電解性を利用した大用量のampholine-free preparative isoelectric focusingの開発、プレカラム誘導化とLC-MS/MSを組み合わせたペプチド・糖・アルデヒドの群特異的な検出法などを開発してきた。

 In vivo activity-guided fractionationを用いてサメ軟骨から経口摂取で血清尿酸値を下げるペプチド、グルテン酵素分解物・牡蠣分解物などから抗炎症作用を持ち肝炎・大腸炎を経口摂取で抑制するペプチドの同定に成功している。また魚の鱗・皮由来のコラーゲンペプチド、カツオの心臓球由来のエラスチンペプチドを摂取した後に血中に移行するペプチドの同定に成功し、これらのペプチドの機能のメカニズムを解明している。今後も海洋生物の健康増進作用を解明してゆくとともに、これらの問題を解決するための分析手法・活性の評価法の開発を行ってゆく。


木下グループ

生き物を観て、生き物から学ぶ

私たちの研究グループでは、海産魚、淡水魚を中心に「生き物を観て、生き物から学ぶ」ことを念頭に研究を進めています。各自のアイデア、思いつきなど自由な発想を大切にしています。

・海産養殖魚でのゲノム編集技術の確立
 マダイやトラフグを対象として、養殖魚におけるゲノム編集技術の確立を目指しています。この技術の活用により肉量が増大した品種や高成長品種の作出を行っています。

・クマノミの縞模様形成機構の解明
 カクレクマノミには多くの模様変異体が存在し、ゲノム編集を用いてその原因遺伝子を明らかにすることで模様形成機構を解明します。

・ヒト疾患モデルメダカの作成
 ゲノム編集の技術を利用すると、疾患の原因遺伝子をメダカに導入することができます。疾患のモデルとなったメダカは、症状の分析・発症メカニズムの解明のための実験に利用できます。